書評『巨大投資銀行』
またまた書評!少し前の本ですが、黒木さん著作の巨大投資銀行。
主人公の桂木が都銀の凝り固まった人事制度に愛想を尽かして退職、モルガンに転職して徐々に成功していくまでの道のりを記した本。上下合わせて1000ページ強ですが、さらさら読めました。
見どころは、以下の3つかと。
・市場、業界を取り巻く政治や経済の潮流
・トレーダーやセールスたちの緊迫感溢れる業務の様子
・その中でキャリアを悩みながら築いていく思考プロセスと考え方
バブル崩壊の気配を感じ取るのがイラク戦争だったり、伝説のトレーダー明神さんを模した竜神が、マーケットの歪みを見つけてアービトラージ仕掛けていく様子だったり、日米関係の是正が投資銀行や邦銀に与える影響だったりと、政治や経済からモロに影響を受けている様子が描写されてます。
その中で、一刻一刻変わる市場の様子を読みながら、何千億単位の勝負を仕掛けたり、法人相手にハードな交渉をしたりとかなり緊迫感が伝わってくる内容。
そして、容赦なくクビを切られていく社員、ボーナス金額の莫大さ、キャリアの不安定さといった点で邦銀の描かれ方とは対極。マネジメントスタイルは、金銭報酬とトップダウンの指示によるもので、スーパープレーヤーが昇格していくプロモーションの考え方。
読んでみて、仕事で扱う金額スケールの大きさや緊張感に面白みを感じたのですが、同時に金銭的報酬と強く結び付いた仕事、金で金を生んでいくあり方などを見て、個人的には自分がやりたいかと言うとピンと来ない、とも同時に思いました。
事業を創るというよりも、事業があるところに、さらにビジネスとしての強さを乗っけていく仕事としての面白みを強く感じています。