平凡情弱高学歴が、ベンチャーに行ってみて。

スローガン株式会社。セールス→キャリアアドバイザーチームのマネージャー→新卒採用担当。官僚志望だった平凡な東大生が、新卒でベンチャーに入ってみての話や、採用周りの話を綴ります。

書評『NETFLIXの最強人事戦略』

書評第2弾です。

少し乗り遅れましたが、ネットフリックスの本を。元ネットフリックス最高人事責任者のパティ・マッコードによる著書。

  

1.リーダーの役割、自由と責任の文化

2.自由と責任を創るための基盤

3.今この瞬間から、ゴール志向で会社をつくる

4.人材の質に妥協しない

5.人材への考え方を、制度に落とし込む

 

 

1.リーダーの役割、自由と責任の文化

ビジネスリーダーの役割は、"素晴らしい仕事を期限内にやり遂げるような優れたチームをつくることだけ"である。

リーダーの役割を、チーム創りに限定しているのがポイントだと思います。プレイングマネジャーであることを求めず、フォーカスしている。この本では、ネットフリックスがかなりドラスティックに、メンバーのパフォーマンスを最大化し強い組織を築く仕組みにしていることについて書いていますが、このリーダーの役割定義にもその一端が見えます。

 

 2.自由と責任を創るための基盤

有給休暇制度を廃止し、経費規定も廃止し、慣行を次々と廃止して社員に委ねるようになっていった。年次計画策定も廃止し、四半期計画だけにした。このような計画や承認の廃止があった分、事業の状態、市場環境などを徹底的に伝える。

何かを任せる、意思決定してもらうにはメンバーの力が追い付いていない、という話をよく聞くが、ではネットフリックスは何故それができたのか?計画をこれだけ廃止しては行動の優先順位が揃わなくなる、と思うところ。次に挙げる文章がポイントかと思った。

 

子どものサッカーは初め、ただボールに群がる。パスを理解できるようになるのは、それが成されているゲームを俯瞰して見てからだ。事業や組織も同じで、実はチグハグでも、当事者は気付かない。だから、事業モデルやポイント、競合環境や厳しさについてちゃんと伝えよう。

「事業理解が乏しく行動の精度が低いと思うのは、それを上げられるほどインプットできていないからだ」という一文。ここまで徹底して考えているのは凄い。

 

3.今この瞬間から、ゴール志向で会社をつくる

「今のチームが理想のチームでないことで、失われている成果はないか?」「今から半年後、史上最高のチームを組織して、信じられない業績を達成している。その時の仕事のやり方は?そして、その絵を実現するにはチームにどんなスキルが必要か?」

人は今の延長線上に未来を想像しがち。だからこそ、非連続な成長を生むため、普通は想像しにくい未来を考えて逆算しようという話。 

 

従業員のキャリアマネジメントに、会社は責任を持たない。社外も含めてきちんと可能性を検討すべきだ。

また、非連続な成長を生むということは、今活躍しているメンバーが将来最適なメンバーでは無くなる可能性があるということ。メンバーのためにも会社のためにも、個人のキャリアと会社のフェーズを切り離して考えるべし、という提言だと考えた。

 

4.人材の質に妥協しない

全ての仕事に、まずまずではなく最適な人材を採用せよ。また、合わないと判断した人材は進んで解雇せよ。単なる定着率ではなく、必要なスキルと経験を備えた人材の数を追うべし。

採用を人数で捉えず、圧倒的な質を追い求めよ。組織の中にいる人材の質についても、今のフェーズとの合致度の高さもあわせて見るべし。

 

目標の達成確度もわからないのに、業績連動ボーナスを設ける必要があるのか?だったら、魅力的な会社にすることにコストをかけるべきだ。

給与はメンバーのモチベーションを引き出すためのものとは捉えていない。結果として大金を払うが、訴求ポイントは給与じゃないという意図の文面。

 

採用面接は、役員会の出席者が会議を欠席または中座してよい唯一の理由だった。優秀な人材がいる、それだけで会社の業績が上向くのだから、事業にコミットしている人、事業に精通している人が採用にあたるべきだ。

それだけの高い質の人材を、給与以外の点で惹きつけて採用するために、課題の魅力度・人材の濃度の2軸で採用にあたる。ユニークかつ社会的影響力の大きな課題に対して、主体的に、かつ優秀な仲間と解決に当たることができるというポイント。そのために採用担当は事業理解を重視され、また事業責任者も採用に対する優先順位を圧倒的に上げている。 

 

5.人材への考え方を、制度に落とし込む

給与制度と人事考課のプロセスを切り離した。給与は、市場トップレベルの水準で払い続けている。

人事考課による評価を元に給与を決めるのではなく、市場でトップレベルの報酬を払う。この部分は流石にビジネスモデルによるのではないか、と思ってあまり腹落ちできていないが、ネットフリックスのこだわりの強さが伺える。

 

「この従業員が情熱と才能をもっている仕事は、うちの会社が優れた人材を必要とする仕事なのか?」

解雇に対する考え方のベースを書いたこのテキスト。何が不得手なのかを考えるのではなく、メンバーの潜在能力を考えて解雇を考えよ、というもの。この本では、一貫して「今いるメンバーで最大のパフォーマンスを出す」のではなく、「最高の組織と今のメンバーを比較する」という思考になっている。ゴール志向を徹底できるかどうか、それに尽きるということだと感じた。